8月1日から、ニューヨーク国連本部で行われる核不拡散条約(NPT)再検討会議に、共同代表・高橋悠太が、カクワカ広島・KNOW NUKES TOKYOから渡航します。
今回のNPT再検討会議の焦点
5年に1度の、NPT再検討会議会議は8月1日~26日の4週間にわたって行われます。(外務省「NPTとは」)NPTは長きにわたり、核軍縮のための対話の場・プラットフォームを提供してきました。今回の会議では、ロシアの核の恫喝の中で、核保有国を巻き込み、合意点を見出せるかが焦点です。
そして、NPTは、50年間、様々な合意を積み上げてきました。核兵器の全面的廃絶への核兵器国による「明確な約束」(2000年再検討会議)との文言が最終文書に盛り込まれました。さらに2010年には、「核兵器のいかなる使用も人道上、破滅的な結果をもたらすことを深く憂慮する」と明記されました。被爆地とのメッセージとも重なります。これらが認識され、今回も最終文書に盛り込まれることが重要です。
まずは、「一般討論演説」は8月1日~4日で、(日本の首相として初めて参加を表明した)岸田首相が発言をするとすれば、8月1日の午前中でしょう(国家元首など位が上の国から発言。)その後は、NPTの3本柱「核軍縮」「核不拡散」「原子力の平和利用」が、3つの「主要委員会」に分かれ、ほぼ同時並行で議論が進みます。
その傍らでは、NGOがサイドイベントを行ったり、パネル展示を行うのが慣例です。
(私自身は、2017年の再検討会議第1回準備委員会以来のNPT渡航です。)
高橋の現地での行動予定
(7月30日NY着、8月10日NY発)
(1)日本の声・経験の発信
6月に行われた核兵器禁止条約「第1回 締約国会議」に参加しました。そこでは外交官などへのアドボカシー(ロビーイング)も行いました。NPTの場合、市民の参画は限定的なので、同様にはできないと思いますが、可能な限り接触していきたいと思います。
また、現在、世界の若者からの提言(ステートメント / Reverse The Trend がとりまとめ)づくりにも関与していますので、日本からの視座を提供したいと思います。
(2)同世代とのネットワーキング
締約国会議で出会った世界の同世代とも再会できそうです。彼らとの関係性を深め、新たな出会いもつくり、これからの行動に活かします。
(3)現地から日本へ向けての発信
締約国会議参加を通して、SNSを駆使し、私たちもメディアである、ということを自覚しました。現地で何が重要であるか(決定事項・議論の流れなど)を、私の視点(市民社会の視点)から日本に発信します。渡航中は、国連内外で行われるサイドイベントやセレモニーなどに参加する予定です。
それらを通して、過去の合意の履行や最終文書採択など、会議の成功と日本の世論喚起に貢献したいと思います。
世界(特に核保有国)が認識すべきこと / そのために日本政府ができること
この1か月、「核兵器廃絶日本NGO連絡会」の枠組みで、外務省担当者とも意見交換を重ねてきました。NGO連絡会として、要請書も提出しています。意見交換の中で、外務省は「これまでのNPTにおける合意は、日本政府としても重要であると考えている」「核兵器の不使用の継続を進める」と主張していました。(外務省との意見交換会 )また、核軍縮・不拡散担当の寺田稔首相補佐官も「少なくとも核兵器を2度と使用せず、広島・長崎への原爆投下後の核兵器の不使用を続ける確認をしたい。(中略)米英の協力を得て、ロシアや中国にアプローチしていく」との述べています。(寺田稔首相補佐官の発言)「不使用の継続」はもちろん大切なポイントではあるのですが、ではそのための日本の取り組みが十分なのでしょうか。
ウクライナ侵攻の最大のポイントは「核抑止政策は危険であり、機能していない」ということだと思います。TPNW締約国会合は、核抑止が極めて危険な政策であることを宣言しました。この点は、「核戦争が全人類に惨害をもたらすものであり、したがって、このような戦争の危険を回避するためにあらゆる努力を払い、及び人民の安全を保障するための措置をとることが必要である」とする
NPT 前文を具体化するものであると考えます。被爆国・日本はNPT を「国際的な軍縮・不拡散体制の礎石」としてきました。であるならば、こうした行動に率先して取り組まなければなりません。
そのために日本ができることは、「核抑止政策からの脱却をきちんと見据え、議論をすること」です。(茂木前外相も「核抑止から脱却した安全保障政策を模索する」と答弁しています。)NPT再検討会議の中でも、核兵器禁止条約を支持する国々(TPNWグループ)から、そのような指摘が出てくるでしょう。
なお、日本が単独で真っ先になすべきことは、「米国の先制不使用」に反対しないこと、また「核兵器禁止条約」の意義を認めることです。「不使用」のためには、「まずは使わないこと」を約束し、「使用を禁止すること」が有効ではないでしょうか。
そして改めて、核兵器の非人道性についても、日本が世界に確認を促すことが大切です。特に参加する核保有国に迫らなければなりません。これは私たち市民社会も取り組みます。世界におけるこの非人道性の認識の共有こそが、核兵器のない世界の達成と維持の基盤となるからです。
まとめ
国家の在り方も多様化し、既存の枠組み・概念だけでは対応しきれなくなっています。今回のNPT再検討会議も難航が予想されます。私たちは、過去の合意の上に、新たな視座を提示し、認識を更新していかなければなりません。そのために私がすべきことが、前述のように日本の経験の発信であり、世界とのネットワーキングなのです。また日本政府担当者に、現地でも働きかけを行い、不十分な点については時に批判をしつつ連携するつもりです。(これまでも「被爆国・日本のU25による提言書」などでプッシュしてきたポイントです。)そして、締約国会議に参加した経験を活かして、「核抑止の否定」など同会議で採択された成果・確立された視座をNPT再検討会議にも持ち込んでいきたいと思います。
それではよろしくお願いいたします。
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なお、今回の渡航は核兵器禁止条約の批准拡大、世界の核被害者支援、核兵器廃棄への支援を目的として活動をサポートする「核なき世界基金」(https://nuclear-free.net/)のサポートを受けています